DTMに欠かせないDAW。
しかし、多すぎる機能や難しい操作ゆえに挫折してしまうDTM初心者が後を絶ちません。
そんな方々を救うため、この記事ではDAWを使いこなすためのヒントを実体験を交えてお伝えしたいと思います!
DAWとその問題点
DAWとは、Digital Audio Workstationの略で、パソコン上で楽曲のアレンジやミックスを行うためのソフトウェアです。
DAWで扱うデータは、大きく分けてMIDIとオーディオの2種類。どちらも音に関するデータではあり、似ているように見えますが、実際はまったく異なる規格であり、分けて考える必要があります。
MIDI
まず、MIDIについて簡単に解説します。
MIDIとは、Musical Instrument Digital Interfaceの略で、音の高さや大きさなどの演奏データを電子楽器間でやりとりするための規格です。楽曲制作では、作曲やアレンジ(編曲)で使用されます。
ピアノロールと呼ばれる画面に、音符となるデータを入力することで、ソフト音源(VSTi)の演奏をコントロールします。この作業は「打ち込み」とも呼ばれ、アレンジのクオリティを左右する、DTMにおいて非常に重要な技術です。そして、初心者がつまづきやすいのも「打ち込み」なのです。
オーディオ
つづいて、オーディオについて解説します。
オーディオとは、音自体をそのまま録音したデータのことです。
楽曲制作では、主にミックスで使用されます。
オーディオデータはこのように波形として表示され、1本ならモノラル(上)、2本ならステレオ(下)を意味します。オーディオには様々な種類の拡張子がありますが、基本的にはWAVです。
ミックスにも打ち込みとはまた違った高度な技術が必要で、誰しも将来的にはつまづくことになります。しかし、それはアレンジが終わった後の工程であり、今は置いておきましょう。
DTM初心者にとってまず優先すべきは、アレンジを完成させる技術。
すなわちMIDIの打ち込みを習得することなのです。
MIDIデータもアレンジが完了次第、全パートオーディオ化します。こうすることで、何年か経って制作環境が変わっても、同じ音を再生することができるのです。
DAWが難しい理由
なぜ初心者はDAWを使いこなせないのでしょうか。
私は、その多すぎる機能に問題があると考えます。ユーザーのためを思って開発された“本来は便利なはず”の機能。しかし、その多くはDAWを熟知した玄人向けの発展的な内容であり、基礎を習得する前の初心者にとっては無用の長物です。それどころか、余計な混乱を招き習得を遅らせる一因となっているように思います。
解決策
DAWにくじけそうなみなさんへ、私からひとつ提案です。
まず、シーケンサーでMIDIに慣れることからはじめてみてはいかがでしょうか?
前置きが長くなってしまいました。ここからが本論です。
シーケンサー
シーケンサーとは、MIDIのみを扱う音楽制作ソフトのことです。
画像は代表的なMIDIシーケンサー「レコンポーザ」の画面。
性能の面で、まだパソコンでオーディオを扱うことが困難だった90年代~00年代初頭、DTMといえばMIDIシーケンサーでした。シーケンサーには打ち込みに必要な“最低限の機能”しかないため、効率よく技術を高めることができるのです。
また、シーケンサーのほとんどはフリーウェア(無料)です。よって、DAWに比べ最初のハードルが低く、これからDTMをやってみようかな?と考えている、DAWすら触ったことがない方にとっても最適な選択ではないでしょうか。
シーケンサーの例
GM音源
DAWでは、演奏にソフト音源(VSTi)を使いますが、シーケンサーはGM音源を主に使います。
GM(General MIDI)とは、音色マップやコントロールチェンジなどを規定したMIDIの統一規格のことで、これを利用したのがGM音源です。
Windows/Macに標準搭載されており、128種類の音色が収録されています。ソフト音源と比べるとその音色はとてもチープで、実用に耐えうるものではありません。しかし、パソコンさえ持っていれば誰でも無料で使うことができます。したがって、MIDIの入門としては最適な音源だと考えます。
パソコンから閲覧している方は、試しに下記のデータをダウンロードして再生してみてください。これがGM音源の音です。
・MIDI 42KB ダウンロード
具体的な方法
シーケンサーをインストールした後、すべき行動はただひとつ!
詳細はこちらの記事にありますのでぜひご覧ください。
とはいえ、いきなりバンドスコアの全パートを打ち込むのは無謀です。はじめはメロディだけでも、ワンコーラスだけでも構いません。とりあえずソフトの操作に慣れましょう。
楽譜が読めない方も中にはいらっしゃると思います。もしそうなら、まず読めるようになりましょう。その重要性はこちらの記事で解説しています。
地味かつ根気の要る作業ですが、打ち込みとはそういうものです。しかし、再生ボタンを押して打ち込んだ通りに音が鳴った時の喜びはひとしお。
私のDAW遍歴
今回、DTMの入口としてシーケンサーをオススメしたのは、過去の私がそうやって打ち込みを習得していったからです。以下に私のDAW遍歴をまとめました。
- てきとーシーケンサ (2001~03頃)
- Singer Song Writer Lite 4.0 (2004~05頃)
- Cubase LE 1.0.9 (2006~07頃)
- SONAR (2008~20頃)
- StudioOne (2021~)
最初の2つはシーケンサーで、3つ目以降がDAWです。DAW導入までに約5年もの期間を要したのは、決して打ち込み技術を磨くためではなく、先述の通りDTM=シーケンサーという時代だったからです。みなさんはこんなに時間をかけないでください。
しかし、結果的にこれが功を奏しました。打ち込みを熟知した状態だったからこそ、支障なくDAWに移行できたのです。
まとめ
・初心者にとってDAWは高機能すぎる
・シーケンサーでMIDI(打ち込み)に慣れよう!
・打ち込みができると自然とDAWも使えるようになる
いかがでしたか?
一見遠回りのようにも見えますが、まずはMIDIにフォーカスを合わせてやってみてください。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いですm(__)m