完成した楽曲をミックスする際、ほとんどのDTMerはDAW上でデジタルミックスを行っていることと思います。
DAWにはトータルリコールやアンドゥリドゥなど、便利な機能が数多く搭載されている一方、プロの曲のような独特の質感(アナログ感)やまとまり(グルー感)がいまひとつ得られず、苦労されている方も少なくないのではないでしょうか?
私もそのひとりで、「アナログミキサーを使ったミックスが自宅でもできないかな~」と、ここ数年思索にふけっています。とはいえ、自宅にSSLやNEVEのラージコンソールを置くことは、金銭的にも物理的にも絶対不可能ですよね。
というわけで、今回は(ProToolsを使用しない)アマチュアの環境でも実現可能なアナログミックスの方法について考えてみたいと思います!
アナログミキサーのチャンネル数
アナログミックスをするためには当然アナログミキサーが不可欠。何chのミキサーがあれば足りるのかをまず考えてみましょう。
楽曲のトラック数はジャンルによってもクリエイターによっても様々。私の場合は30~40トラックを使うことが多く、最新作の「andante -アンダンテ-」は、31トラックでした。
では、アナログミキサーのチャンネル数も30~40あれば足りるかというとそうではありません。なぜなら、31トラックのうち約半数はステレオトラックであり、チャンネル数に換算すると45chとなるからです。
しかし、我々の手の届く範囲で45chのアナログミキサーがあるかというとありませんし、置く場所もありません。
最大チャンネル数は32
現実的に導入可能なアナログミキサーの最大ch数は32です。
よって私の場合、各トラックを独立させた状態(パラアウト)でミックスをしようと思うと、どうやっても足りません。したがって、いくつかのパートはまとめた状態(ステム)で出力する必要がありそうです。
・MACKIE / 3204VLZ4 ¥180,800
・YAMAHA / MGP32X ¥183,800
・ALLEN&HEATH / ZED-436 ¥258,000
※商品価格は2022/05/16時点のサウンドハウス価格
32ch出力できるオーディオインターフェイス
さて、ミキサーのチャンネル数が決まりました。次に考えるべきはオーディオインターフェイスをどうするかです。
32chのミキサーをフルに使うと仮定した場合、当然ながら32chのアナログ出力できるインターフェイスも必要となるわけですが、このチャンネル数は完全にプロ機です。非常に高価な上、選択肢もあまりありません。
・Antelope / Orion 32+ Gen3 ¥411,000
・LYNX / AURORA(n) 32 ¥803,000
・APOGEE / Symphony I/O MKII ¥1,147,300
今回はひとまず、USB接続またはThunderbolt接続に対応した製品に絞って探しましたが、DanteやMADIにも広げればもっといろいろあると思います。
ADATを使った方法
RMEから「DigifaceUSB」という、4つのADAT入出力を持つインターフェイスが発売されています。これとFerrofish「A32Pro」などのDAコンバーターを組み合わせれば、32OUTの環境が構築できます。
・Ferrofish / A32 ¥352,000
そして、おそらく最も安価なのはこの動画で紹介されているRME「DigifaceUSB」とBEHRINGER「ADA8200」4台を組み合わせる方法です。これなら18万円で実現可能です。
・BEHRINGER / ADA8200 ¥29,800×4
ただ、BEHRINGERと聞くと音質面でちょっとどうなんだろう?と不安が残ります。でも、この比較動画を見る限りではそこまで悪い音ではなさそうですね。
まとめ
というわけで、アマチュア環境で実現可能なアナログミックスの方法について考えてみました。
どれだけ安く組もうと思っても30万は下らないですね。とはいえ、安すぎる環境だとかえってDAWミックスよりも悪くなる懸念もありますから、60万くらいは最低見ておくべきでしょうか。
また、チャンネル数を32と仮定して話を進めてきましたが、どのみち何トラックかは1つにまとめることになるわけだから、ステムミックス前提で24ch、最悪16chでもどうにかなるかな?とも思いました。そしたらコストもハードルもグッと下がります。
もちろん、ミキサーがアナログになっただけでプロの音に一変するなんてことはありえませんが、デジタル特有のザラついた感じは緩和されるでしょうし、そしてなにより、フェーダーを実際に触ってミックスする方がマウスでカチカチやるよりはるかに楽しいです。
そんなわけで、当方も少しづつアナログミックスできる環境を整えていきたいと考えてますm(__)m