コンプレッサーとEQ(イコライザー)、みなさんはどちらの処理を先に行いますか?
プラグインの順番が変わると、少なからず仕上がりも変わってきます。
結論から言えば自分の好きなようにやればOKなのですが、初心者のうちは自分流のスタイルなんて決まっていないですし、迷ってしまう方も多いですよね。
というわけで、今回は「コンプとEQどちらを先にすべきか問題」について、私なりの考えを書きたいと思います!
持論:EQ → コンプ
私は断然EQ→コンプ派です。なぜなら、超低域などの不必要な帯域、つまり他のパートを邪魔する帯域を削ってからの方がコンプの効きがいいからです。
過去にボカロ調声の記事でもこのことについて触れましたが、これはボーカル処理だけでなく、すべての楽器に言えることです。
さて、私なりの考えは述べたのでもう書くことがないのですが、これだけだとあまりにも記事が短すぎるし、みなさんも納得しないと思うのでもう少し書きます。
どうするべきかいろいろ考えた結果、プロレコーディングの現場を参考にすれば、より説得力のある答えが導き出せそうです。
プロが使う機材は?
一般的にプロのレコーディングエンジニアはSolid State Logic(SSL)やNEVEのラージコンソールを使ってミックスを行います(最近だとプラグインのみで済ませてしまう方も多いようですが)。
というわけで、そのラージコンソールがどのような順序で信号処理を行っているか、つまりコンプとEQどちらが先になっているかを調べ、最終的な結論を出したいと思います!
調査方法
Plugin Allianceからリリースされている、実在するコンソールをエミュレートしたチャンネルストリップ(コンソールから1ch分抜き出したもの)8種類を対象に調査しました。
本来はプラグインではなく実機マニュアルのブロックチャート等を参考にすべきですが、いい感じの資料が見つからず数も集まらなかったためこうなりました。
結果
・コンプ → EQ
①フィルター → ②コンプ(ゲート) → ③EQ
・bx_console SSL 4000 E
・bx_console SSL 4000 G
・bx_console SSL 9000 J
・bx_console N
①フィルター → (ゲート) → ②コンプ → (リミッター) → ③EQ
・bx_console AMEK 9099
①コンプ → (ゲート) → ②フィルター → ③EQ
・bx_console Focusrite SC
・EQ → コンプ
①フィルター/EQ → ②コンプ(ゲート)
・Lindell Audio 50 Series
・Lindell Audio 80 Series
所感
【コンプ → EQ】が8種類中6種類と圧倒的多数で、この結果だけ見ると私の意見が覆されたようにも思えます。
ですが、待ってください。大部分のプラグインが最初に通るセクション「フィルター」はEQの一種と考えることができます。
フィルターとは、指定した周波数以下または以上の信号をカットする回路で、前者はHPF(ハイパスフィルター)、後者はLPF(ローパスフィルター)と呼ぶ。
実際、YAMAHA公式サイトにもこのような記述があります。
ハイパスフィルター(HPF)は、設定したよりも高い周波数(ハイ)を通す(パス)フィルターです。イコライザーという名前は付いていませんが、設定された周波数帯以下の音を減衰させるためイコライザーの仲間と言っていいでしょう。
低域の音を減らすことにより、ボーカルの息による吹かれ音(ポップノイズ)などをカットしたり、ハイハット用のマイクにバスドラムの音が混ざるのを防いだりするのに使われます。HPFは弦楽器、金管楽器、木管楽器に対しても効果的に作用します。
しかも、ここで例として挙げられている用法は、冒頭で私が述べた「不必要な帯域のカット」そのもの。つまり、コンプの前にEQで音を整えることは別に間違っていないのです。
まとめ
① EQ (不必要帯域のカット) → ② コンプレッサー → ③ EQ (音作り)
まずフィルターとしてカット方向のEQ、次にコンプレッサーでダイナミクス調整、最後に音作りとしてブースト方向のEQ。これが今回の結論です!
別々のプラグインを3つ使ってもいいし、チェンネルストリップ1つでまとめて処理してしまってもOKです。
もっと言えば、プラグインは0でも構いません。何も挿さない方が良い結果が得られることもあります。重要なのは、どういう意図でその処理を行っているのか(プラスに働いているか)を常に考えながらミックスすること。
ぜひ参考にしてみてくださいm(__)m