【比較レビュー】SSL新製品「SUPER 9000」は「Revival 4000」とどう違う?伝説的コンソールサウンドが1Uに!

2025年10月21日、Solid State Logic(SSL)から新しいチャンネルストリップ「SUPER 9000 SUPER ANALOGUE CHANNEL STRIP」が発表されました!

今回、発表された新製品「SUPER 9000」は、伝説的な9000シリーズコンソールのチャンネルストリップを1Uラックサイズに凝縮。現代のスタジオ環境に、アナログ機材が持つ独特の質感、深み、そして「音楽的な」響きをもたらします。

この記事では、「SUPER 9000」の全貌を解き明かし、その機能と技術を深掘りするとともに、2か月前に発表されたばかりのチャンネルストリップ「Revival 4000 Signature Analogue Channel Strip」との比較を通じて、それぞれの製品がどのようなユーザーに最適なのかを徹底的に解説します!

目次

SL 9000 Jシリーズコンソールとは?

引用:SSL公式サイト

Solid State Logic (SSL) は、1969年の創業以来、常にレコーディング技術の革新をリードしてきたブランドです。特に、1970年代後半に登場したSL 4000 Eシリーズコンソールは、インラインコンソールの概念を確立し、VCAオートメーションを初めて導入するなど、その後のスタジオワークフローに革命をもたらしました。SSLのコンソールは、単なるミキシングツールではなく、サウンドそのものに「SSLマジック」と称される独特のキャラクターを与えることで、世界中のエンジニアやプロデューサーから絶大な支持を得てきました。

そして、1990年代に登場したのが、今回「SUPER 9000」の源流となるSL 9000 Jシリーズコンソールです。このコンソールは、当時のデジタル化の波と並行して、アナログの可能性を極限まで追求した結果として生まれました。SL 9000 Jは、その「SuperAnalogue」テクノロジーによって、これまでにない超高品位なサウンドを実現しました。

9000シリーズが築き上げたサウンドは、「クリーンで、ワイドで、オープン、伸びやかな高域、超ディープな低域、そしてコントロールルームであなたをノックダウンさせるほどのパンチ」と表現されます。この独特のサウンドキャラクターは、特にヒップホップやR&B、そして現代のロックやポップスといったジャンルのサウンドスケープに大きな影響を与え、今日の「モダンSSLサウンド」の基礎を築きました。

「SUPER 9000」は、この伝説的な9000シリーズのサウンドを、現代の制作環境で手軽に、そして最高のクオリティで再現するために開発されたのです!

SUPER 9000 おもな機能

「SUPER 9000」は、伝説的なSL 9000 Jコンソールのチャンネルストリップを、現代のスタジオにフィットする1Uラックサイズに凝縮したオールインワン・アナログ・プロセッサーです。SSLが長年培ってきたSuperAnalogueテクノロジーの粋を集め、卓越したパンチ、深み、そして息をのむような透明感を持つサウンドを提供します。

SuperAnalogueテクノロジー

「SUPER 9000」の心臓部には、SSL独自の「SuperAnalogueテクノロジー」が採用されています。この技術は、信号経路を極めて透明かつ広帯域に設計することで、オーディオ信号から一切の損失を排除することを目指しています。その設計思想は以下の要素によって成り立っています:

  • 超広帯域なオーディオ帯域幅: 20Hz〜20kHzで±0.1dBという驚異的にフラットな周波数特性を実現し、可聴域を超えた広大なサウンドイメージを捉えます。
  • 超低過渡相互変調歪み: 信号の過渡応答における歪みを極限まで抑え、音の立ち上がりや減衰を正確に再現します。
  • オーディオ経路に電解コンデンサを使用しない: 電解コンデンサは信号経路にわずかながら色付けや歪みを加える可能性がありますが、SuperAnalogue回路ではこれを排除することで、純粋な信号伝送を可能にしています。
  • 可聴帯域全域で極めて低い位相シフト: 位相の乱れは音像のぼやけや定位の不明瞭さにつながりますが、SuperAnalogueは全帯域で位相直線性を保ち、クリアで立体的な音像を実現します。

これらの要素が組み合わさることで、SUPER 9000は「比類のないパンチ、精細さ、そして実物よりも大きなサウンドステージ」を提供し、現代の「SSLサウンド」を定義する透明感と明瞭さを実現します。ボーカル、アコースティック楽器、マスタリングなど、素材の質感を最大限に活かしたい場面でその真価を発揮するでしょう。

VHD(Variable Harmonic Drive)回路

「VHD(Variable Harmonic Drive)回路」は、キャラクターとサチュレーションをサウンドに加えるためのユニークな回路です。VHDは、入力ゲインを上げることで2次倍音と3次倍音をブレンドし、サウンドに彩りを与えます。2次倍音を強調すれば豊かな真空管のような温かみを、3次倍音を強調すればより鋭いトランジスタ風のエッジ感を加えることができます。これにより、クリーンなサウンドから積極的なドライブサウンドまで、幅広い表現が可能です。

さらに、「SUPER 9000」は「INPUT FLIP」ボタンを搭載しており、VHD回路をマイク入力からライン入力へ移動させることができます。これにより、DAWからのラインレベルのステムや楽器の信号に、手動でパッチングし直すことなくVHDによるハーモニックカラーリングを施すことが可能となり、ミックス段階でのクリエイティブな音作りを強力にサポートします。

9000シリーズ直系のダイナミクス

「SUPER 9000」のダイナミクスセクションは、SSLの現代的なダイナミクス処理の真髄を体現しており、究極の制御性とパンチ力を実現します。

コンプレッサー

高性能なTHAT 2181A VCAを中核に据えたコンプレッサーは、SL 9000コンソールで初めて導入され、Dualityシリーズにも継承された「Fast Attackモード」「ピーク検出オプション」を搭載しています。これにより、トランジェントを自然に抑えつつ、サウンドに力強いパンチを与えることが可能です。

エキスパンダー/ゲート

SSLのクラシックなエキスパンダー/ゲートセクションも内蔵されています。スレッショルドに可変ヒステリシスが組み込まれており、精密なゲート制御とダウンワードエキスパンション管理のためのHOLDコントロールを備えています。これにより、ノイズを効果的に除去しながら、楽器のサスティンや表現力を損なうことなくダイナミクスをコントロールできます。

また、SUPER 9000では、このダイナミクスセクションをEQの前(Pre)またはEQの後(Post)に配置変更できる柔軟なルーティングオプションが提供されます。これにより、サウンドメイキングの意図に応じて、ダイナミクス処理の順序を最適化することが可能となり、よりクリエイティブな結果へと導きます。

GシリーズEQ VS EシリーズEQ

292 Gシリーズ「ピンクノブ」EQ:

このEQは、スムーズで音楽的なブースト/カットを特徴とし、プッシュするほどにQが狭まる可変Q設計を採用しています。シェルフは急峻なスロープと特徴的な「アンダーシュート/オーバーシュート」を備えており、その結果として得られるサウンドは非常に音楽的で、豊かな響きを持っています。

242 Eシリーズ「ブラックノブ」EQ:

サー・ジョージ・マーティンとの共同開発によって生まれたこのEQは、より精密なコントロールを可能にする定Q設計が特徴です。292と比較して、より外科的なアプローチで繊細なトーンシェイピングを行いたい場合に適しています。

さらに、EQセクションには「E Bell/G÷3」および「Gx3/E Bell」というユニークなボタンが備わっています。292モードでは、これらのボタンを使用することで、低中域周波数を3で割り、高中域周波数を3で掛けることができ、通常の中域バンドの範囲をはるかに超える周波数をターゲットにすることが可能となります。これにより、驚異的な柔軟性を持ってサウンドを形作ることができます。242モードでは、これらのボタンは低域帯域と高域帯域をベルモードとシェルビングモード間で切り替える機能を提供します。

ハイパス(18dB/oct)およびローパス(12dB/oct)フィルターも搭載されており、これらは完全にバイパスすることも、入力信号またはダイナミクスサイドチェーンにルーティングすることも可能です。EQはダイナミクスサイドチェーンに配置できるため、周波数に依存したダイナミクス処理など、高度なサウンドデザインを実現します。

柔軟な処理とルーティング

「SUPER 9000」は、現代の複雑なスタジオワークフローに対応するための非常に柔軟な処理とルーティングオプションを提供します。バランスド・インサートポイントを搭載しており、お気に入りの外部アウトボードギアを信号経路にシームレスに統合できます。このインサートポイントは、デフォルトの入力段直後から出力段(出力トリム直前)へと位置を再配置することが可能です。

また、専用の外部サイドチェーン(キー)入力、柔軟な処理順序の変更、そしてダイナミクスサイドチェーンリンク機能を備えています。特に、2台のユニットをステレオペアとして使用する際には、サイドチェーンリンク機能が非常に有効で、一貫したステレオイメージのダイナミクス処理を実現します。

「INPUT FLIP」ボタンは、ライン入力をマイクプリアンプ経由でルーティングし、同時にリアパネルのMIC接続をライン経路に切り替えることで、DAWからのラインレベルのリターン信号に、手動での再パッチングなしにサチュレーションやディストーション処理を施すことを可能にします。これは、ミックス段階でアナログの質感を手軽に加えたい場合に非常に便利な機能です。

徹底比較!SUPER 9000 VS Revival 4000

引用:SSL公式サイト

SSLのチャンネルストリップには、「SUPER 9000」と並んで「Revival 4000」という人気モデルが存在します。これら二つの製品は、どちらもSSLの伝説的なコンソールサウンドを現代に蘇らせることを目的としていますが、その「伝説」の源流が異なります。この違いを理解することが、どちらの製品があなたの制作スタイルに適しているかを判断する鍵となります。

比較表

スクロールできます
SUPER 9000Revival 4000
モデルSL 9000 J / DualitySL 4000 B / 4000 E
マイクプリSuperAnalogue+VHDJensenトランス搭載 4000Eタイプ
コンプTHAT 2181A VCAディスクリートClass A VCA
EQGシリーズ(292) / Eシリーズ(242) Brown Knob(02) / Black Knob(242)
ディエッサーなしあり
音の方向性クリーン、ワイド、オープン、Hi-Fi、立体感アグレッシブ、パンチー、ミッドフォワード、力強い
用途ボーカル、アコースティック楽器、マスタリング、透明感重視のミックスなど、素材の質感を最大限に活かしたい場合ドラム、ベース、ロックボーカル、ギターなど、積極的な音作り、存在感のあるサウンドを求める場合

コンセプトの違い

SUPER 9000

SUPER 9000:現代的

1990年代以降の、よりHi-Fiでクリーン、そして広大なダイナミクスレンジを求める現代的なサウンドを志向した「SL 9000シリーズ」のサウンドを再現しています。SuperAnalogueテクノロジーによる超低歪みと圧倒的な透明感が最大の特徴であり、原音忠実性を重視しつつ、豊かな倍音と立体的なサウンドステージを求める場合に最適です。

Revival 4000:クラシック

1970年代後半から80年代にかけて音楽シーンを席巻した「SL 4000シリーズ」のサウンドキャラクターを再現しています。Revival 4000は、トランスフォーマーによる独特のサチュレーションや、VCAコンプレッサーのパンチ感を特徴とし、よりアグレッシブでミッドフォワードなサウンドを求める場合に最適です。

サウンドキャラクターの違い

SUPER 9000:奥行き

SuperAnalogueテクノロジーに裏打ちされた「SUPER 9000」は、非常にクリーンで透明感の高いサウンドが特徴です。これにより、音源の持つ本来の質感やニュアンスを損なうことなく、広大なサウンドステージと奥行きのある立体的な音像を実現します。

特に、繊細なボーカルやアコースティック楽器、オーケストラ、そしてマスタリングなど、原音忠実性とクリアな表現が求められる場面でその真価を発揮します。VHD回路を使用することで、適度なアナログの温かみやエッジを加えることも可能ですが、基本的には「素材を最大限に活かす」というアプローチに適しています。

Revival 4000:力強さ

一方、「Revival 4000」は、SL 4000シリーズの「アグレッシブでパンチーなサウンド」を忠実に再現します。Jensenトランスを搭載したプリアンプや、ディスクリートClass A VCAによるコンプレッサーは、独特の倍音とサチュレーションを生み出し、サウンドに力強い存在感を与えます。

特に、ドラム、ベース、エレキギター、ロックボーカルなど、ミックスの中で「前に出てくる」ような積極的な音作りをしたい場合に最適です。ディエッサー機能も搭載しているため、歯擦音の処理など、ボーカルプロダクションにおいても強力なツールとなります。

どちらを選ぶべき?

Revival 4000

どちらのチャンネルストリップが優れているかという問いに、明確な答えはありません。重要なのは、あなたの音楽制作のスタイル、求めるサウンドキャラクター、そして対象となる音源の性質に合わせて選択することです。

SUPER 9000:原音忠実

は、現代的でHi-Fiなサウンド、透明感、広大なサウンドステージ、そして原音忠実性を重視するエンジニアやプロデューサーに最適です。特に、ジャンルを問わず、素材の持つポテンシャルを最大限に引き出し、クリアで奥行きのあるミックスを目指す場合に強力なツールとなるでしょう。

Revival 4000:積極的色付け

は、クラシックなSSL 4000シリーズの「あのサウンド」、つまりアグレッシブでパンチー、そしてミックスの中で存在感を放つサウンドを求める方に最適です。ロック、R&B、ヒップホップなど、積極的なキャラクター付けやドライブ感が必要な音楽ジャンルで、その真価を発揮するでしょう。

SUPER 9000 発売日と価格

「SUPER 9000」の発売日は2025年11月下旬予定で、価格は「Revival 4000」と同じ¥297,000(税込)。
伝説的なコンソールサウンドをぜひ手に入れてください!

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