音楽制作の歴史において、Rupert Neve(ルパート・ニーヴ)という名は、妥協のない音質と革新的な回路設計の代名詞です。彼の設計哲学は、単なる信号の増幅や制御に留まらず、「音楽性」と「アナログの魂」を音源に吹き込むことにありました。その精神を継承するRupert Neve Designs(RND)から、NAMM 2026で驚くべき新製品「OptoFET Dual Stage Compressor」が発表されました!

デジタル・レコーディングが主流となり、プラグインがスタジオの主役となった現代においても、RNDは一貫してアナログ回路の可能性を追求し続けています。彼らの製品は、デジタルでは再現しきれない倍音の豊かさ、立体感、そして「グルー感」をミックスにもたらすことで知られています。OptoFETは、まさにこのRNDの哲学を体現した最新の成果であり、ヴィンテージの特性を継承しつつ、現代の複雑なミキシング環境に対応する柔軟性を兼ね備えた、画期的なダイナミクス・ツールと言えるでしょう。
この1Uラックユニットは、RNDが新設計したFET回路と、同社のMBT(Master Bus Transformer)などで実績のある光学式(OPTO)回路を統合しています。OptoFETは、単なるデュアルコンプレッサーという枠を超え、相互作用と帯域分割を可能にした、現代のプロデューサーが待ち望んだ「究極のダイナミクス・ツール」の全貌を、技術的な側面から活用法まで徹底的に解説します!


OptoFETの基本思想:FETとOPTO、2つの伝説の融合

Rupert Neve Designsの製品ラインナップにおいて、FETコンプレッサーの登場は、多くのエンジニアにとって待望の出来事でした。RNDのエンジニアリングチームは、長年の研究を経て、伝統的なFETコンプレッサーの持つ超高速なレスポンスと、RND独自の音楽的なテクスチャを融合させたまったく新しい回路を完成させました。
本機は、この新設計のFETセクションと、信号を滑らかに包み込む音楽的なOPTOセクションという、キャラクターの異なる2つのコンプレッション・エンジンを統合しています。この組み合わせは、ヴィンテージ機材の愛好家にとって「1176とLA-2Aの組み合わせ」を連想させるものであり、ダイナミクス処理の黄金律を1台で実現します。

伝説のコンビネーションを1台に凝縮する意義
なぜ、FETとOPTOの組み合わせが「黄金律」とされるのでしょうか。それは、両者が持つコンプレッション特性が、音源のダイナミクスを制御する上で理想的な役割分担を果たすからです。
- FETコンプレッサー(1176系):
- 役割: ピーク・リミッティング。極めて速いアタックタイム(マイクロ秒単位)で、突発的なトランジェントを瞬時に捉え、オーバーロードを防ぎます。
- 音響的特徴: アグレッシブでパンチがあり、音源を「前に出す」効果が強い。コンプレッション時に独特の倍音歪み(サチュレーション)を発生させ、音色にエッジと存在感を付加します。
- OPTOコンプレッサー(LA-2A系):
- 役割: 平均レベルのレベリング。光素子の反応速度に依存するため、アタックとリリースが緩やかで、聴感上非常に自然なコンプレッションを提供します。
- 音響的特徴: 信号を優しく包み込み、音源全体に「グルー感」と温かみをもたらします。特にボーカルやベースなどの持続音に対して、安定した音量感を与えます。
OptoFETは、この「速さ」と「粘り」という相反する要素を一つの筐体内で共存させ、エンジニアに無限の音作りの選択肢を提供します。単体では実現し得ない、極めて柔軟で質の高いダイナミクス制御が可能となるのです。
両セクションは完全に独立しており、それぞれにパラレル・ブレンド(Blend)コントロール、サイドチェイン・ハイパスフィルター(SC HPF)、そして最大+20dBのメイクアップ・ゲインを備えています。特にパラレル・ブレンド機能は、コンプレッションされた信号とドライ信号をミックスすることで、ダイナミクスを維持しつつサチュレーションやカラーリングを付加する、現代のミキシングに不可欠な手法を容易に実現します。
さらに、プロの現場での再現性を高めるため、すべての可変コントロールには31ステップのデテント付きポテンショメータが採用されています。これは、ステレオペアでの正確な設定や、複雑な設定を後日完全に再現するリコール作業を確実かつ容易にするための、RNDらしい徹底した配慮です。デテント付きのノブは、設定の再現性を保証するだけでなく、エンジニアが直感的に「カチッ」とした設定値を見つけ出す手助けとなります。
驚異の柔軟性:Dual StageとDual Bandモードの革新性
OptoFETを単なるコンプレッサーから「ダイナミクス・ワークステーション」へと昇華させているのが、その柔軟なルーティング機能です。本機には、シリアル接続を行う「Dual Stage」と、帯域分割を行う「Dual Band」という、全く異なる2つの動作モードが用意されています。
Dual Stageモード:シリアル接続の可能性を拡張
Dual Stageモードでは、FETとOPTOの2つのコンプレッサーを直列(シリーズ)で接続します。このモードの真価は、フロントパネル中央に配置されたFLIPボタンにあります。このボタン一つで、接続順序を「FET > OPTO」から「OPTO > FET」へと瞬時に入れ替えることができ、サウンドキャラクターの劇的な変化を試すことができます。
| 接続順序 | 主な効果とサウンドキャラクター | 音響的な詳細 |
|---|---|---|
| FET > OPTO | FETで鋭いピークを抑制し、OPTOで全体の音量を滑らかにレベリングする。最も標準的で、ダイナミクスを自然に整える手法。FETのパンチをOPTOの温かみで包み込む。 | FETがトランジェントを制御し、OPTOが平均RMSレベルを安定させる。結果として、ダイナミクスレンジは圧縮されるが、聴感上の違和感が少ない。ボーカルやアコースティック楽器に最適。 |
| OPTO > FET | OPTOで緩やかにダイナミクスを整えた後、FETでアタックを強調したり、サチュレーションを付加する。よりアグレッシブで、音色にエッジを加える手法。OPTOのグルー感をFETのスピードで引き締める。 | OPTOが信号を圧縮し、その圧縮された信号をFETがさらにアグレッシブに処理する。FETのサチュレーション効果がより顕著になり、音色に「パンチ」と「厚み」が増す。ドラムやベースに最適。 |
このFLIP機能により、エンジニアはコンプレッサーの順序による音色の違いを瞬時に比較し、ソースに最適なダイナミクス処理を選択することができます。
例えば、OPTOを先に使うことで、より音楽的なグルー感を先に作り出し、その後にFETでパンチを調整するといった、高度なサウンドデザインが可能になります。この順序の変更だけで、音の質感や奥行きが大きく変わるため、OptoFETの最もクリエイティブな機能の一つと言えます。

Dual Bandモード:精密な帯域別ダイナミクス制御
さらに革新的なのが、Dual Bandモードです。X-OVER INボタンを押すと、内部のクロスオーバー・フィルターが有効になり、OptoFETは2バンド・コンプレッサーへと変貌します。フロントパネルのCROSSOVERノブにより、50Hzから500Hzの間で分割周波数を自由に設定でき、低域と高域に対してそれぞれ異なるコンプレッサーを割り当てることが可能です。
- 50Hz付近: サブベースの領域。この帯域のダイナミクスをOPTOで優しくレベリングすることで、低域の安定感を確保しつつ、不要なポンピングを防ぎます。
- 100Hz〜200Hz: キックやベースの「太さ」を決定づける領域。この帯域をFETでタイトに制御することで、リズムの輪郭を際立たせることができます。
- 500Hz付近: 「泥臭さ」や「箱鳴り」の原因となる領域。この帯域をOPTOで緩やかに圧縮することで、ミックスのクリアさを向上させることができます。
新次元の音作り:GRITとBLOOMによるウェーブシェイピング
OptoFETが他のコンプレッサーと一線を画す最大の理由は、独自の倍音付加モードであるGRITとBLOOMにあります。これらは、RND製品でおなじみの「SILK」回路とは異なるアプローチで設計されており、サイドチェイン回路とメイン回路の相互作用によって、より劇的な波形整形(ウェーブシェイピング)を実現します。
GRIT(FETセクション):攻撃的な高域の輝きとサチュレーション
FETセクションに搭載された「GRIT」モードをオンにすると、コンプレッサーは強力なウェーブシェイパーへと変貌します。このモードは、高域成分を中心に豊かな奇数次倍音を付加し、サウンドに鋭いエッジと存在感を与えます。
奇数次倍音は、原音の周波数に対して3倍、5倍、7倍…といった整数倍の周波数で発生する倍音です。これらは一般的に「アグレッシブ」「ブライト」「エッジの効いた」といった印象を与え、音源をミックスの中で際立たせる効果があります。
GRITは、ミックスの中で埋もれがちなギターやボーカルを、EQを使わずに「前に出す」ための強力な武器となります。特に、ロックやメタルなどのアグレッシブなジャンルにおいて、サウンドにパンチとアタック感を加えるのに最適です。Blendノブと併用することで、原音の芯を残したまま適度なダーティさを加えるといった高度な処理も容易に行えます。
BLOOM(OPTOセクション):包み込むような低域の温かみと倍音
対照的に、OPTOセクションの「BLOOM」モードは、作動させると低次倍音(主に偶数次倍音)が大幅に増加し、サウンド全体に温かみと丸み、そしてふくよかな低域をもたらします。
偶数次倍音は、原音の周波数に対して2倍、4倍、6倍…といった整数倍の周波数で発生する倍音です。これらは人間の聴覚にとって最も自然で心地よい倍音であり、「アナログらしい」「温かい」「太い」といった印象を与えます。デジタル特有の硬さを取り除き、アナログらしい「太さ」を加えたい場合に最適です。特にベースやマスタリング・バスにおいて、その威力を発揮します。
BLOOMは、EQを使わずに音色の太さを調整する際に極めて有効であり、低域の存在感を自然に増強します。このモードは、ジャズやアコースティックな音楽、あるいはミックス全体にアナログの「グルー」感を与えたい場合に理想的です。
SILKとの決定的な違い:ウェーブシェイパーとしての進化
RNDの代名詞とも言える「SILK」回路は、物理的な出力トランスの飽和を通じて第2次・第3次倍音を強調することで、サウンドに滑らかさと奥行きを与えるものでした。しかし、GRITとBLOOMは、新開発のサイドチェイン回路との相互作用によって効果を生み出すため、SILKよりもはるかに劇的な波形整形効果をもたらします。
これにより、従来のRND製品では難しかった、よりアグレッシブで個性的なサウンドメイクが可能となりました。GRITとBLOOMは、単なる倍音付加を超えた、真のウェーブシェイパーとして機能するのです。
これらのGRITとBLOOMは、Blendコントロールと併用することで、原音のダイナミクスを維持したまま、必要な分だけ「色」を乗せることが可能です。音を整えるだけでなく「音を作る」ための機能と言えるでしょう。
RNDの技術的卓越性:カスタム・トランスと低ノイズ設計
OptoFETの音響的な質の高さは、単にFETとOPTOの回路を組み合わせたことだけによるものではありません。Rupert Neve Designsの製品すべてに共通する、カスタム設計されたトランスフォーマーと、徹底した低ノイズ・高ヘッドルーム設計がその基盤にあります。
RNDのカスタム・トランスフォーマーは、信号の入出力段に配置され、信号にわずかながらも音楽的なサチュレーションと倍音を付加します。これは、デジタル機器では得られない、アナログならではの「太さ」と「奥行き」を生み出す重要な要素です。
OptoFETは、このトランスフォーマー技術と、新設計のFET/OPTO回路を組み合わせることで、-100dBuを超える超低ノイズフロアを実現しながら、+26dBuという驚異的なヘッドルームを確保しています。これにより、プロフェッショナルなスタジオ環境において、いかなる信号レベルでもクリッピングを気にすることなく、RNDの豊かなサウンドを最大限に引き出すことが可能となっています。
ニーヴ哲学の継承:高電圧駆動の優位性
Rupert Neve Designsの製品の多くは、±24Vといった高電圧で回路を駆動しています。これは、一般的なプロオーディオ機器の±15V駆動と比較して、約2倍のヘッドルームを確保することを意味します。
OptoFETもこの設計哲学を踏襲しており、この広大なヘッドルームこそが、コンプレッション時においてもトランジェントの自然さと低歪みを保つ鍵となります。特にFETコンプレッサーは、その動作原理上、信号を強く圧縮する際に歪みやすい傾向がありますが、RNDの高電圧設計は、その歪みを音楽的な倍音に昇華させ、音の破綻を防ぐ役割を果たしています。
各セクションの詳細スペックと操作感

OptoFETの真価を理解するために、それぞれのコンプレッサー・セクションのスペックを見ていきましょう。RNDが導き出した設定値には、現場での使い勝手を最優先したこだわりが詰まっています。
FETセクション:スピードとパンチの極致
新設計のFETコンプレッサーは、その名の通り「速さ」が最大の武器です。アタックタイムは最速で100マイクロ秒(0.1ms)という驚異的なスピードを誇り、ドラムのスナップやパーカッシブな音源のピークを確実に捉えます。
| パラメータ | 設定範囲 / 仕様 | 技術的特徴と効果 |
|---|---|---|
| アタック | 100μs〜50ms | 超高速設定により、トランジェントを逃さず制御。ドラムやパーカッションのピーク処理に最適。 |
| リリース | 30ms〜1.5s | 幅広い設定により、アタック感を強調するポンピング効果から、滑らかなレベリングまで対応。 |
| レシオ | 4:1/8:1 | 伝統的なFETコンプレッサーの特性を踏襲。力強いコンプレッションとハードなリミッティング。 |
| SC HPF | 125Hz | 低域による不要なポンピングを回避。GRITモード時は自動的に無効化。 |
レシオ設定は、FETらしい力強いコンプレッションが得られる4:1と、よりハードなリミッティングに近い効果を生む8:1の2種類。125HzのサイドチェインHPFを有効にすれば、キックなどの低域成分による不要なポンピングを防ぎつつ、中高域のダイナミクスを正確にコントロールできます。
このSC HPFは、GRITモード時には自動的に無効化されるという、サウンドメイクを優先した設計がなされています。
OPTOセクション:音楽的なレベリングの極み
一方のOPTOセクションは、光学式コンプレッサー特有の「緩やかで音楽的な挙動」を追求しています。MBT(Master Bus Transformer)のColor Comp回路をベースにしつつ、OptoFETのためにさらに最適化が施されました。
| パラメータ | 設定範囲 / 仕様 | 技術的特徴と効果 |
|---|---|---|
| アタック | 5〜50ms | FETに比べ緩やかな設定。聴感上自然で、トランジェントを活かしたまま平均レベルを整える。 |
| リリース | 100ms〜2.5s | 音楽的なリリース特性。特にボーカルやミックスバスで、滑らかなレベリングを実現。 |
| レシオ | 2:1/5:1 | 低いレシオ設定により、ナチュラルなレベリングや「グルー」コンプレッションに最適。 |
| SC HPF | 125Hz | 低域の量感を損なうことなく、中高域のダイナミクスを安定させる。 |
2:1の低いレシオ設定は、ボーカルやアコースティック楽器のレベルを自然に整えるのに最適です。また、5:1の設定では、光学式らしい粘りのあるコンプレッションを楽しむことができます。FETセクションと同様に125HzのSC HPFを備えており、低域の量感を損なうことなくレベリングが可能です。
OPTOセクションの緩やかな特性は、特に長時間にわたるコンプレッションが必要なソースに対して、聴感上の違和感なくダイナミクスを制御する能力に長けています。
活用シーン別ガイド:OptoFETをどう使いこなすか?
OptoFETはその多機能さゆえに、スタジオ内のあらゆる場面で活躍します。具体的な5つの活用例をご紹介します。
ボーカル・トラッキング:ピーク抑制と質感の両立
ボーカルの録音時には、Dual Stageモードで「FET > OPTO」の順に接続するのがお勧めです。まずFETセクションで突発的なピークを高速に抑え、その後のOPTOセクションで全体の音量を滑らかに整えます。
- FET: アタックを最速(100μs)、リリースを中程度(300ms〜500ms)、レシオを4:1に設定し、ピークを-3dB〜-5dB程度抑えます。
- OPTO: アタックを中程度(10ms)、リリースをソースに合わせて調整(1s〜1.5s)、レシオを2:1に設定し、全体の平均レベルを-2dB〜-3dB程度圧縮します。
さらに、OPTO側のBLOOMをわずかに加えることで、マイクプリアンプだけでは得られない「シルキーで太い」ボーカル・サウンドを録り段階で作り上げることができます [3]。この手法は、特にダイナミクスレンジの広いボーカルに対して、自然なコンプレッションとアナログの質感を同時に与える理想的なアプローチです。
エレキギター(クリーン〜クランチ):アタックの強調とサスティンの伸長
エレキギターの処理には、Dual Stageモードで「OPTO > FET」の順に接続し、FET側のGRITを積極的に活用します。
- OPTO: アタックを遅め(30ms)、リリースを速め(300ms)、レシオを5:1に設定し、サスティンを長く保ちます。
- FET: アタックを速め(1ms)、リリースを中程度(500ms)、レシオを8:1に設定し、ピッキングのアタックを強調します。
FET側のGRITをブレンドで調整することで、アンプの歪みとは異なる、倍音豊かなサチュレーションを加え、クリーンサウンドには「きらめき」と「張り」を、クランチサウンドには「エッジ」と「攻撃性」を付加することができます。
ドラムバス:Dual Bandモードによる革命的処理
ドラムのグループ・バスでは、Dual Bandモードが真価を発揮します。クロスオーバーを150Hz付近に設定し、低域(Low)にはFETを、高域(High)にはOPTOを割り当ててみてください。
- Low (FET): キックの打面をタイトに引き締め、リズムの軸を安定させます。FETの超高速アタックは、キックのトランジェントを正確に制御するのに最適です。
- High (OPTO): スネアやシンバルの余韻を音楽的に伸ばし、キット全体の空気感をまとめ上げます。OPTOの緩やかなリリース特性が、ドラムサウンドに自然なグルーヴ感を与えます。
これにより、低域がボヤけることなく、かつ高域が耳に痛くない、理想的なドラムサウンドが手に入ります。
ドラム・オーバーヘッド/ルームマイク:空気感の強調とピークの制御
ドラムのオーバーヘッドやルームマイクには、Dual Stageモードで「OPTO > FET」の順に接続し、OPTO側のBLOOMを試してみてください。
- OPTO設定: アタックを遅め、リリースを速めに設定し、レシオを2:1で浅くコンプレッションすることで、部屋の残響音やシンバルのサスティンを自然に持ち上げ、空気感を強調します。BLOOMを併用することで、低域のふくよかさを加え、ドラム全体に「太さ」を与えます。
- FET設定: FETはリミッターとして機能させ、突発的なシンバルのピークやスネアのリムショットを制御し、デジタルクリップを防ぎます。
マスタリング:最終的なトーンの「磨き上げ」
ステレオリンク機能を活用すれば、OptoFETは強力なマスタリング・プロセッサーになります。Dual Stageモードで「OPTO > FET」の順に設定し、まずはOPTOで全体のダイナミクスを音楽的に接着(Glue)させます。
- OPTO設定: アタックを遅め(30ms)、リリースを速め(300ms)、レシオを2:1に設定し、ミックス全体にわずかなグルー感を与えます。
- FET設定: レシオを4:1、アタックを中程度(10ms)、リリースを速め(100ms)に設定し、全体のピークをわずかに制御します。
最後にFETセクションのGRITモードをBlendノブで薄く混ぜることで、ミックス全体にプロフェッショナルな「輝き」と「抜け」を付加することができます。この微細なサチュレーションが、デジタルマスタリングでは得難いアナログの深みと立体感をもたらします。
まとめ
Rupert Neve Designs「OptoFET」は、単なるヴィンテージ・エミュレーションを超えた、真に現代的なアナログ・プロセッサーです。1176やLA-2Aといった伝説的な名機のエッセンスを継承しつつ、Dual BandモードやGRIT/BLOOMといった革新的な機能を加えることで、アナログ機材の可能性を大きく広げました。
FETのスピードとOPTOの粘りという相反する特性を自在に操り、さらにGRITとBLOOMという倍音の魔法をブレンドできるOptoFETは、現代のエンジニアが直面するあらゆるダイナミクス処理の課題に応えることができます。特に、デジタル環境で失われがちな「アナログの質感」を、緻密なコントロールのもとで音源に注入できる点は、この製品の最大の魅力です。
発売は2026年内を予定しており、世界中のスタジオで新たなスタンダードとなることは間違いありません。もしあなたが、自身のサウンドにさらなる深みとパンチ、そして「魔法」を求めているなら、OptoFETはその答えになるはずです。

