YAMAHA新シンセ「MODX M6/7/8」徹底比較レビュー!MONTAGE Mとの違いは?

2018年に発売されたヤマハのシンセサイザー「MODX」シリーズは、その高い音源性能と優れた可搬性で、多くのミュージシャンから支持を得てきました。そして2025年10月、約7年ぶりとなるメジャーアップデートモデルとして、「MODX M」シリーズが登場しました!

この記事では、新製品「MODX M6/7/8」の魅力と、その主要な進化ポイントを深掘りします。さらに、上位モデルである「MONTAGE M」との比較を通じて、それぞれのモデルがどのようなユーザーに最適なのかを詳細に解説します!

目次

MODX Mシリーズの概要

MODX Mシリーズは、演奏スタイルや用途に合わせて選べる3つのモデルで構成されています。それぞれのモデルは、鍵盤数と鍵盤タイプが異なり、プレイヤーのニーズに応じた選択肢を提供します。

スクロールできます
鍵盤数鍵盤タイプ幅×奥行き×高さ質量価格
MODX M661鍵FSB鍵盤882×347×117 mm6.6 kg170,500円
MODX M776鍵FSB鍵盤 1,089×347×117 mm7.6 kg198,000円
MODX M888鍵GHS鍵盤1,310×391×152 mm13.6 kg247,500円

MODX M6とM7には、ヤマハのCKシリーズでも好評のセミウェイテッドFSB鍵盤が採用され、M8には改良版GHS鍵盤が搭載されています。これにより、軽量設計でありながらも、より安定した弾き心地と表現力が向上しています。

また、前モデルとほぼ同等の軽量設計を維持しており、高い可搬性は健在です。各モデルには専用のソフトケース(別売)も用意されており、M6/M7用は背負えるバックパックタイプM8用はキャスター付きタイプとなっており、アクティブなキーボーディストにとって非常に魅力的です。

MODX Mの主要な進化ポイント

MODX Mシリーズの登場は、単なるマイナーチェンジではなく、数々の革新的な進化を伴っています。特に注目すべきは、サウンドエンジン、ユーザーインターフェース、そして制作環境との連携における大幅な強化です。

圧倒的な表現力を生み出すサウンドエンジン

MODX Mの最大の進化点の一つは、そのサウンドエンジンにあります。フラッグシップモデルMONTAGE Mと同様に、従来のAWM2FM-X音源に加え、新たにAN-X音源を搭載したMotion Control Synthesis Engineが核となっています。

  • AWM2(Advanced Wave Memory 2)音源:ヤマハの伝統的なPCM音源であり、アコースティック楽器からシンセサウンドまで、原音の高い再現性と自然で豊かな表現を得意とします。MODX Mでは、波形メモリー容量が従来の約2倍となる10.7GBに拡張され、より多種類かつ高解像度な音色を内蔵しています。さらに、1パートあたりのエレメント数が従来の8から128に大幅に増強されたことで、よりリッチで複雑なサウンドを1パートで構築できるようになりました。
  • FM-X(Frequency Modulation X)音源:ヤマハが世界に誇るFM音源は、8オペレーター構成へと進化し、従来のFMサウンドに比べて圧倒的な厚みと広がりを実現しています。複雑な倍音構成や、エレクトリックピアノ、ベル、ベースなど、立体的で存在感のあるデジタルトーンの作成が可能になり、クリアさを保ちながらも温かみのある質感を両立しています。
  • AN-X(Analog Physical Modeling)音源:MODX Mシリーズで新たに搭載されたバーチャルアナログ音源です。往年のアナログシンセの音作りを物理的な振る舞いまでシミュレートし、発振器の揺らぎや電圧変動による微妙なピッチの揺れ、フィルターのドライブ感など、本物のアナログ機材特有の「生きた音」を再現します。3基のオシレーターに加え、ユニゾンやクロスモジュレーション、リングモジュレーションも搭載されており、ウォームなパッドから鋭いリードまで、重厚で多彩な音作りを可能にします。

これらの3つの音源を統合することで、MODX Mは最大268音(AWM2: 128音、FM-X: 128音、AN-X: 12音)の同時発音数を実現し、あらゆるジャンルの音色を圧倒的な表現力で演奏することが可能です。

直感的な操作性と進化したユーザーインターフェース

MODX Mは、フラッグシップモデルMONTAGE M譲りの直感的なユーザーインターフェース(UI)ユーザーエクスペリエンス(UX)を継承しています。特に、物理的な操作子の増強は、ライブパフォーマンスにおける操作性を格段に向上させています。

  • 物理ボタンとフェーダーの大幅増強:音色のボリュームなどを操作するフェーダーが従来の4本から8本に倍増し、パフォーマンス音色内の設定を瞬時に切り替えるSCENEボタンも4つから8つに増えました。さらに、フェーダー下にはパート切り替えのためのボタン、中央画面下には新たに6つのディスプレイノブが追加されるなど、物理的なボタン、ノブ、フェーダーが大幅に強化されています。これにより、今まで画面タッチで行っていた音作りや音色切り替え、コントロールが、より直感的かつストレスなく行えるようになりました。
  • カラータッチスクリーンとCPU強化:視認性・操作性に優れた7インチワイドVGA TFTカラーLCDタッチパネルを搭載し、内部CPUの強化により、タッチパネルの反応速度や音色の切り替え速度も向上しています。
  • SUPER KNOBとモーションシーケンス:複数のパラメーターの動きを一つのノブ操作でコントロールできる「SUPER KNOB」や、膨大なパラメーターをシーケンスに沿って制御し音色を変化させる「モーションシーケンス」といったMotion Control機能は健在で、アーティストの独創的なパフォーマンスを強力にサポートします。

これらの進化により、MODX Mは演奏中に手元でより細やかなコントロールが可能となり、サウンドに生き生きとした躍動感を与えることができます。

制作環境とのシームレスな連携

MODX Mは、ハードウェアシンセサイザーとしての性能だけでなく、現代の音楽制作環境との連携も強化されています。特に注目すべきは、専用ソフトウェアシンセサイザーの提供と、USBオーディオ/MIDIインターフェース機能の充実です。

  • Expanded Softsynth Plugin (ESP) for MODX M:2026年初頭に提供開始予定のこのプラグインは、MODX MをDAW上でソフトウェアシンセサイザーとして再現できる画期的な機能です。MODX Mの正規登録ユーザーであれば誰でもダウンロード・アクティベートして使用でき、外出先などPCのみの環境でもMODX MのPerformanceをエディットしたり、音色を使用した楽曲構築が可能になります。
  • USB MIDI 2.0 & マルチチャンネルAUDIOインターフェース:MODX Mは、USBケーブル1本で効率的なMIDIレコーディング、バーチャル・インストゥルメントのモニタリング、マルチトラック・レコーディングを可能にするUSB MIDI & AUDIOインターフェース機能(10 OUT/4 IN、最大96kHz)を搭載しています。MIDI 2.0に対応することで、ノートベロシティ、スーパーノブ、ピッチベンド、モジュレーションに高解像度のデータを提供し、より繊細な表現をDAWに記録できます。
  • Cubase AI同梱とDAWリモート機能:Steinberg社のDAW「Cubase AI」が同梱されており、アイデアの具現化から最終的なミキシングまでをサポートします。また、専用のDAWリモートボタンにより、Cubase、Logic、ProTools、LiveなどのDAWのハードウェアコントローラーとしてMODX Mを使用でき、ミキサーやトランスポート、ソフトシンセプラグインなどを直感的にコントロールできます。

これらの機能により、MODX Mはステージでの演奏だけでなく、スタジオでの楽曲制作においても強力なツールとなります。

その他

  • 旧モデルとの音色互換性:MODX Mは、旧MODXやMONTAGEシリーズはもちろん、旧フラッグシップであるYAMAHA MOTIF(XS/XF)とも音色やパフォーマンス等のデータの互換性があります。これにより、長年愛用してきた音色資産をMODX Mで活用したり、データを移行して使用することが可能です。
  • キャンペーン情報:発売を記念して、「ヤマハ レジェンダリー シンセ&キーボード サウンドライブラリー」のプレゼントキャンペーンや、学生限定のキーボードケースプレゼントキャンペーンも実施されます。

上位モデル「MONTAGE M」との比較表

MODX MがMONTAGE MのDNAを受け継いでいることは明らかですが、両者には明確な違いも存在します。ここでは、それぞれの共通点と相違点を比較し、どのようなユーザーにどちらのモデルが適しているかを考察します。

共通点

  • Motion Control Synthesis Engine:両モデルともに、AWM2、FM-X、そして新搭載のAN-X音源を組み合わせたMotion Control Synthesis Engineを搭載しており、共通の音源システムを核としています。
  • OS/UIのコンセプト:MONTAGE Mから受け継がれたOSとユーザーインターフェースのコンセプトにより、基本的な操作感やワークフローは共通しています。
  • Expanded Softsynth Plugin (ESP)対応:どちらのモデルも、DAWと連携するESPに対応しており、制作環境での柔軟な活用が可能です。

相違点とそれぞれの強み

MODX Mは「モビリティ」を重視したミドルクラスモデルであり、MONTAGE Mは「プロデュース」を想定した堅牢性と高度な演奏表現を追求したフラッグシップモデルという、製品コンセプトの違いが両者の仕様に反映されています 。

スクロールできます
MODX MMONTAGE M
コンセプト気軽に持ち運べるモビリティ重視のミドルクラスプロユースを想定し豊かな演奏表現や効率的なオペレーションが行えるフラッグシップ
SSS可能パート数使用パート数が6パートまでのパフォーマンス使用パート数が8パートまでのパフォーマンス
エフェクト同時使用数最大12パート+A/Dパート最大16パート+A/Dパート
音源方式Motion Control Synthesis Engine (AWM2&FM-X & AN-Xハイブリッド音源)Motion Control Synthesis Engine (AWM2&FM-X & AN-Xハイブリッド音源)
搭載音色数34273487 *本体OS v3.0で追加された音色含
同時発音数AWM2音源=128音、FM-X音源=128音、AN-X=12音AWM2音源=256音、FM-X音源=128音、AN-X=16音
波形ユーザーメモリー2.1GB3.7GB
鍵盤M6/7:セミウェイテッドFSB鍵盤(イニシャルタッチ)、M8:GHS鍵盤(イニシャルタッチ)M6/7:FSX鍵盤(イニシャル/アフタータッチ)、M8x:GEX鍵盤(イニシャル/ポリアフタータッチ
サブ画面なしあり
リボンコントローラーなしあり
ノブ/スライダー/ボタン4 / 8 / なし8 / 8 / 16
MIDI 2.0対応部ノートベロシティ、スーパーノブ、ピッチベンド、モジュレーションホイールノートベロシティ、アフタータッチ、スーパーノブ、ピッチベンド、モジュレーションホイール、8ノブ、8スライダー、フットコントローラー、サスティン
外装素材プラスチックアルミニウム
重量6.6kg、7.6kg、13.6kg15.3kg、17.6kg、28.1kg
入出力アウトプット端子(アンバランス出力):OUTPUT、インプット端子:A/D INPUTアウトプット端子(TRSバランス出力):OUTPUT、ASSIGNABLE OUTPUT、インプット端子:A/D INPUT
MIDIIN、OUT(THRUは設定により使用可)IN、OUT、THRU
コントローラーフットスイッチ、フットコントローラーフットスイッチ、フットコントローラー
USB TO DEVICE1つ2つ
USBインターフェース最大5ステレオ、44.1~96kHz、24bit最大16ステレオ、44.1~192kHz、24bit
https://faq.yamaha.com/jp/s/article/000027793

MONTAGE Mは、より多くの物理操作子リボンコントローラーを搭載し、アフタータッチ対応のFSX鍵盤を採用することで、プロフェッショナルな現場での高度な演奏表現とリアルタイムコントロールに特化しています。また、SSS(シームレスサウンドスイッチング)機能の効果可能なパート数や、AWM2およびAN-X音源の同時発音数、ユーザーフラッシュメモリー容量においてもMONTAGE Mが優位に立っています。

一方、MODX Mは、MONTAGE Mの主要なサウンドエンジンとUIコンセプトを継承しつつ、軽量コンパクトなボディと手頃な価格帯を実現しています。物理操作子も大幅に増強されたことで、ライブパフォーマンスでの操作性も向上しており、MONTAGE Mのハイスペックなサウンドを気軽に持ち運びたいユーザーにとって最適な選択肢となります。

どちらを選ぶべき?

  • MONTAGE Mがおすすめのユーザー:最高の音質と演奏性、そしてプロフェッショナルな制作環境における妥協のないコントロールを求める方。スタジオワークが中心で、より多くの音源やエフェクトを同時に使用したい方。アフタータッチなど、鍵盤による表現力を最大限に追求したい方。
  • MODX Mがおすすめのユーザー:MONTAGE Mの優れたサウンドと操作性を継承しつつ、高い可搬性とコストパフォーマンスを重視する方。ライブパフォーマンスでの使用が多く、軽量で持ち運びやすいシンセサイザーを求めている方。自宅での制作とライブでの演奏を両立させたい方。

まとめ

YAMAHAの新製品「MODX M」シリーズは、フラッグシップモデル「MONTAGE M」の強力なDNAを受け継ぎながらも、「モビリティ」という新たな価値を追求した、まさに次世代のシンセサイザーと呼ぶにふさわしい製品です。ぜひみなさんの音楽制作にお役立てください!

目次