こんにちは、れれれPです。このたびは新譜『DEEP BLUE』をお買い上げいただき、まことにありがとうございます。
このセルフライナーノーツでは、収録曲のウラ話や聴いてほしいポイントなどについて解説しています。この内容を参考に、さらにアルバムを楽しんで聴いていただければ幸いです。
楽曲解説に入る前に、まずこの『DEEP BLUE』というアルバムがどのような経緯で誕生したのか、簡単にご説明します。
さかのぼること15年。2008年の8月16日、私は初めて参加したコミックマーケットで、自身初となるCD『サマーグラフィティ』を頒布しました。当時の私はCD制作についてのノウハウをまったく持っておらず、プレス業者の選び方も入稿データの作り方も、まったく分からない中での挑戦でした。
様々な方のご協力により、どうにか完成まではこぎつけたものの、うまくできなかったなと感じる部分が多く、特にアレンジ・ミックス・マスタリングといったサウンド面については、「いつかちゃんと作り直したい」という思いがずっとありました。その念願を15年越しに実現させたのが本作です。
なお、このアルバムでは『サマーグラフィティ』収録曲(#2,3,5,6)以外にも、夏関連曲(#4,7)と新曲(#1,8)を収録しています。新しく生まれ変わったれれれPの夏曲たちをどうぞお楽しみください!
01.under the sea (inst) -Original mix-
水中をイメージして制作した書き下ろしのインスト曲です。
波のSE(効果音)から静かに始まり、1分を経過したあたりで4つ打ちに変化。そこへピアノリフなどが加わり盛り上がりがピークを迎えると、徐々に楽器数が減っていき、最後は波の音だけになる「静・動・静」的な構成です。
透明感のあるシンセパッド系の音色を多用し、空間の揺らぎや広がりを表現しました。使用しているソフト音源は、UVIの「Falcon2」やReveal Soundの「Spire」などです。
02.サマーグラフィティ -15th V4X Ver.-
今回のアルバムで最初にリメイクに着手した曲であり、もっとも手を加えた曲でもあります。
現代的なサウンドを目指し、既存曲(#2~7)はすべてボーカル・ドラム・ベースの差し替えを行っているのですが、この曲ではシンセ類やギターなど、それ以外のパートも大規模に刷新しているので、相当印象が違って聞こえると思います。
特にボーカルはACT1からV4Xに進化しているため、歌詞が格段に聞き取りやすくなったのではないでしょうか。
03.セツナノヒカリ -15th V4X LEN Ver.-
原曲では初音ミクがボーカルをつとめる「セツナノヒカリ」と「NOSTALGIA」。
本作ではアルバムとしての統一感を持たせるため、両曲ともボーカルを鏡音レンに変更することに決めました。それにともない、女性言葉で書かれている歌詞も書き変えるべきか悩みましたが、曲の世界観ごと変わってしまいそうだったため、そのまま行くことに。
この曲は元のアレンジに大きな破綻もなく、差し替えは最低限(ボーカル・ドラム・ベース)です。
04.火花 -YouTube Edit-
この曲は昨年リリースしたアルバム『HELLO』にも収録されていますが、こちらはYouTube投稿用に構成を変更したバージョンです。
視聴維持率などを考慮して(インパクトを持たせるため)1サビを頭に持ってきたり、尺をコンパクトにするため2Aと2Bを削ったりしています。また、ボーカルも人間っぽく聞こえるよう歌いまわしの再調声を行いました。
長年ほぼ放置状態にあったYouTubeチャンネルをどうにかせねば、と今年に入ってようやく重い腰を上げました。
05.NOSTALGIA -15th V4X LEN Ver.-
この曲は私がまだVOCALOIDに出会う前の2004年頃、同級生たちとバンド活動をしていた時代に作ったものです。古い作品ではあるものの思い入れのある曲です。
ひとつのコード進行(Ⅳ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅴ)を何度も転調させながら展開していくのが最大の特徴。
「セツナノヒカリ」同様ボーカルを鏡音レンに変更し、ドラム・ベースに加え、シンセソロなども差し替えています。
06.One Promise -15th V4X Ver.-
2015年の『オールタイム れれれでぃお!』収録の際に手直していたため、それと比較すれば大きな違いはないかと思います。ただ、ボーカルはV4Xに変わっていますので、歌詞の聞き取りやすさは向上しているはず。
ちなみに、この曲は大江千里氏の『ずっと海をみてた』という曲が元ネタとなっています。Spotifyなどでも配信しているので、ぜひ聴き比べてみてください。
また、収録曲中で唯一のJASRAC管理曲なので、このためだけにJASRACにFAXを送り許諾番号を発行してもらいました。
07.夏のむこうの蜃気楼 -15th V4X Ver.-
2014年制作の(収録曲の中では)わりと新しめの曲なので、さほど手直しの必要はありませんでしたが、ドラムとベースは差し替えています。
夏の夕方の海をモチーフにした歌詞で、その内容は「One Promise」にも通じるところがあります。
1B(まっすぐすぎる地平線が~)や2B(透明すぎる海の色に~)などの比喩表現がよくできているなと今読み返しても思います。
08.人魚のナミダ -Original mix-
アルバム用に書き下ろした新曲です。私がこれまで発表してきたバラードは、ドラムやシンセの入ったオケがにぎやかなものが多かったと思います。そこでこの曲ではピアノ一本の”完全バラード”を目指して制作しました。
歌詞は6月頃に観に行った映画『リトル・マーメイド』が大変素晴らしく、それがモチーフとなっています。本曲だけでなく、1曲目「under the sea」やアルバムタイトル『DEEP BLUE』、ジャケットやブックレットをはじめとするCD全体のデザインもこれに影響を受けています。
アンデルセンの原作(日本語訳版)には『人魚のお姫さまには、涙というものがありません。涙がないだけに、もっと苦しい、つらい思いをしなければなりませんでした。』という一節があり、これがタイトルの由来になっています。
なお、同名の少女漫画が存在しますが、これ以外につけようがなかったため、変更はしませんでした。
ミックス・マスタリングについて
本作では楽器の差し替えなどによるアレンジの刷新だけでなく、ミックスやマスタリングにも力を入れています。その結果、大幅な音質向上に成功しましたので、その内容について解説します。
まず、数年前まで愛用していたDAW「SONAR」(2017年に開発終了)で作られた過去の楽曲データ(#2,3,5,6,7)をStudio Oneに移行。それ以外の楽曲(#1,4,8)は、アレンジ段階からStudio Oneで行い、新旧の制作環境を統一させました。
このDAW移行により、SONARで気がかりだった音の濁りやザラつきが解消され、クリアで聴き心地のよいサウンドに仕上げることができました。
そして、ミックスとマスタリング作業はCD(44.1kHz/16bit)の約3.3倍の情報量を誇るハイレゾ環境(96kHz/24bit)で実施。
もちろん、そのままではCDへ書き込めないため、最終的には44.1kHz/16bitにダウンコンバートしていますが、それでもその効果は十分感じていただけると思います。
今後、このハイレゾ版音源もどこかで公開できればと考えています。
おわりに
いかがだったでしょうか。新譜『DEEP BLUE』に込めた思いを自分なりに解説してみました。
2008年の『サマーグラフィティ』をお持ちの方は、ぜひ聴き比べてみてください。いろいろな発見ができると思います。れれれP(L3Project)は今後も精力的に活動を続けてまいりますので、これからもご支援をよろしくお願いいたします。