近年、eスポーツの隆盛とライブストリーミング文化の浸透により、ゲーム配信は単なる趣味の領域を超え、一つのプロフェッショナルな表現の場となりました。視聴者を惹きつけ、快適な視聴体験を提供するために、「映像」と「音声」のクオリティは不可欠です。特に音声は、配信者の個性やゲームの臨場感をダイレクトに伝える生命線と言えます。
しかし、ゲーム配信における音声のセットアップは複雑になりがちです。ゲーム音、自分の声、ボイスチャット相手の声、BGMなど、複数の音源をミックスし、視聴者とボイスチャット相手それぞれに最適なバランスで届ける必要があります。
この複雑な課題を、直感的かつ高音質で解決するために開発されたのが、YAMAHAのゲームストリーミングオーディオミキサー「ZGシリーズ」です。
この記事では、シリーズの先駆けとして高い評価を得た「ZG01」と、さらなる進化とコンパクト化を実現した最新モデル「ZG02」の2機種を徹底的に比較解説します!
YAMAHA ZGシリーズとは?
YAMAHAのZGシリーズは、プロフェッショナルな音響機器開発で培われた技術を惜しみなく投入した、ゲーミング特化型のオーディオミキサーです。その最大の特長は、「ZG Controller」という専用ソフトウェアと連携し、PC上で複数のオーディオデバイスとして認識される点にあります。
デュアル・オーディオ・チャンネル
ZGシリーズは、PCに接続すると「配信(Streaming)」用と「ボイスチャット(Voice)」用の2系統の仮想オーディオデバイスとして認識されます。
| PCからの出力(ZGへの入力) | PCへの入力(ZGからの出力) | 主な用途 | |
| Streaming | ゲーム音声、BGMなど | 配信ソフトウェアへの入力 | 視聴者向けミックス |
| Voice | ボイスチャット相手の音声 | ボイスチャットアプリへの入力 | VC相手向けミックス |
これにより、例えば「配信にはゲーム音と自分の声を入れるが、ボイスチャット相手には自分の声だけを送る」といった、複雑なルーティングとミックスを物理的なノブ操作で直感的に行えるようになります。この革新的な設計こそが、ZGシリーズが多くの配信者に支持される理由です。
ZG SOUND PROCESSING
ZGシリーズには、ゲーム体験と配信クオリティを向上させるための、ヤマハ独自のDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)技術が搭載されています。
- 3Dサラウンド(ZG SURROUND): ステレオヘッドホンで最大7.1chのゲーム音声を立体的に再現し、ゲーム内の音の方向を正確に把握できます。
- FOCUS MODE/EQ: ゲーム内の特定の音(足音など)を強調したり、不要なノイズを低減したりすることで、ゲームプレイを有利に進めることが可能です。
- ボイスエフェクト: 配信者の声を魅力的に聴かせるためのエフェクト(リバーブ、コンプレッサー、エコーなど)を瞬時に適用できます。
これらの機能は、すべてZG本体のボタンやノブにアサインされており、PCソフトを操作することなくリアルタイムでON/OFFや調整が可能です。
ZGシリーズで配信の質が向上するワケ

視聴者満足度の向上
ZG01とZG02、どちらを選んだとしても、ZGシリーズの導入はあなたの配信クオリティを劇的に向上させます。ZGシリーズ最大の貢献は、「音のミックス」と「音質向上」です。
- ノイズのないクリアな声: ヤマハ独自のDSP技術により、マイクに入ったノイズを低減し、配信者の声をクリアに視聴者に届けます。
- 臨場感あふれるゲーム音: ZG SURROUND機能は、ゲームの音響を立体的に再現し、視聴者にもその臨場感を伝えることができます。
- 完璧な音量バランス: 配信者が物理ノブでゲーム音、VC音、自分の声のバランスをリアルタイムで調整できるため、「ゲーム音が大きすぎて声が聞こえない」といった事故を防げます。
プレイヤー体験の向上
ZGシリーズは、配信者だけでなく、プレイヤー自身のゲーム体験も向上させます。
- 足音の強調: FOCUS MODE/EQ機能により、対戦ゲームで重要な「足音」などの環境音を強調し、敵の位置を正確に把握できます。
- 遅延のないモニタリング: ZG本体に接続されたヘッドホンからは、DSP処理された音が低遅延で聞こえるため、ゲームプレイに集中できます。
配信環境のストレス軽減
ZGシリーズは、複雑な音声ルーティングをPC上ではなくミキサー側で完結させます。これにより、配信ソフトやVCソフトの設定がシンプルになり、配信前の準備やトラブルシューティングにかかる時間を大幅に削減できます。特に、ZG01のHDMI接続は、コンシューマ機配信の配線ストレスを劇的に軽減します。
ZG01:HDMI搭載の決定版
HDMIオーディオ抽出機能
2022年に発売された「ZG01」の最大の特長は、2入力1出力のHDMI端子を搭載している点です。これは単なるHDMIスイッチャーとして機能するだけでなく、HDMI信号から音声のみを抽出し、PCの音声とミックスするという画期的な役割を果たします。
ZG01がおすすめのユーザー
ZG01は、以下のような配信者にとって最適な選択肢です。
- PS5, Switchなどの配信がメイン:HDMI接続による高音質かつシンプルな配線はZG01の独壇場
- 配線のシンプルさを最優先したい:複数の周辺機器をZG01一つに集約したいユーザーに最適
- プロ志向のユーザー:シリーズのフラッグシップモデルとして充実した入出力端子と機能を提供
ZG02:コンパクト化と最適化
コンパクト化と低価格化
2024年に登場した「ZG02」は、ZG01の基本設計を踏襲しつつ、「スクワッドとのコミュニケーションに必要な機能」に焦点を当てて最適化されたモデルです。ZG01と比較して、ZG02は筐体が大幅に小型化されました。
- サイズ: 幅が約33mm小さく重さが約0.2kg軽く
- 価格: 税込価格が31,900円から23,100円へより手に取りやすい価格帯に
このコンパクト化は、主にHDMI端子の非搭載によって実現されました。これにより、PCゲームやUSB接続のゲーム機での配信をメインとするユーザーにとって、必要な機能だけを厳選し、デスクスペースを有効活用できる設計となっています。
「リンク機能」と「STREAM DECK互換性」
ZG02の登場に合わせて、専用ソフトウェア「ZG Controller」もアップデートされ、ZGシリーズ全体の利便性が向上しました。
- リンク機能: 配信中の音量調整を、PC上の「ZG Controller」ではなく、ZG02本体の物理ノブでリアルタイムに調整できるようになりました。これにより、配信画面から目を離すことなく、直感的な音量管理が可能になります。
- STREAM DECK互換性: Elgato社の多用途コントロールデバイス「STREAM DECK」との互換性が追加され、ZGシリーズの各種エフェクトや設定をSTREAM DECKから瞬時に操作できるようになりました。これはZG01にも適用されるアップデートですが、ZG02の「直感的な操作性」というコンセプトをさらに強化するものです。
ZG02がおすすめのユーザー
ZG02は、以下のような配信者にとって最適な選択肢です。
- PCゲームやVCがメインのユーザー:HDMI接続が不要なためコンパクトで低価格なZG02で十分な機能を得られる
- デスクスペースを節約したいユーザー:小型化された筐体は限られたスペースでも邪魔にならない
- コスパ重視の初心者・中級者:高音質DSPとデュアルチャンネル機能がより安価に
徹底比較:ZG01とZG02の決定的な違い
| ZG01 | ZG02 | |
| 発売時期 | 2022年 | 2024年 |
| 定価(税込) | 31,900円 | 23,100円 |
| HDMI端子 | 搭載 (2入力1出力) | 非搭載 |
| 寸法 | 195×110×47.5mm | 162×113×61mm |
| 重量 | 0.8kg | 0.6kg |
| ターゲット | プロ志向 | エントリー層 |
ZG01:「ゲーム機配信の最高峰」を求めるなら

- PS5やSwitchなどHDMI出力を持つゲーム機を配信に使用し、最高の音質とシンプルな配線を求めている。
- HDMIのパススルー機能を利用して、遅延なくゲーム映像をモニターに出力したい。
- デスクスペースに余裕があり、豊富な入出力端子をフル活用したい。
ZG01は、コンシューマ機配信者にとっての「決定版」であり、HDMIによる音声抽出機能は、他のミキサーにはない大きなアドバンテージです。価格差を上回る価値が、その多機能性と接続のシンプルさにあります。
ZG02:「PCゲーム・VCの最適解」を求めるなら

- PCゲームでの配信や、ボイスチャットを通じたプレイが中心である。
- HDMI接続は不要であり、その分、コンパクトさと低価格を優先したい。
- ZGシリーズの核となる高音質DSPとデュアルチャンネル機能だけを手軽に導入したい。
ZG02は、PCゲーマーやVCヘビーユーザーにとっての「最適解」です。ZGシリーズの核となる機能はそのままに、不要な機能を削ぎ落とすことで、より多くの人が手に取りやすい価格とサイズを実現しました。ZG Controllerのアップデートによる操作性の向上もあり、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
注意!キャプチャーボードが必要
本記事でご紹介したYAMAHA ZG01およびZG02は、ゲーム配信における音声を最適化するためのオーディオミキサーです。
特にZG01はHDMI端子を搭載していますが、これは音声の抽出と映像のパススルーのためのものであり、キャプチャーボードの機能は含まれていませんのでご注意ください。高品質な配信を行うには、ZGシリーズとキャプチャーボードの両方を揃える必要があります。
まとめ

YAMAHA ZG01とZG02は、どちらもゲーム配信の音声環境を劇的に改善する高性能なオーディオミキサーです。
あなたの現在の配信環境と、今後挑戦したい配信スタイルを照らし合わせ、最適な一台を選んでください。ZGシリーズを導入することで、あなたの配信は間違いなく次のレベルへと進化するでしょう!





