みなさんは「No-Input Mixing」という言葉を聞いたことがありますか?
文字通り、ミキサーの入力端子にマイクやギターなどの楽器を一切接続せず、ミキサー内部で発生するノイズのみを使って演奏を行う技法のことです。
この記事では、あまり知られていない「No-Input Mixing」の概要や実際の方法について解説していきたいと思います。
No-Input Mixingとは?
「No-Input Mixing」とは、ミキサー内部に存在する微量なノイズを増幅させ、その信号をEQやゲインなど様々なツマミを駆使してあたかもシンセサイザーのように演奏する技法のことです。
No-Inputという言葉は、入力端子にマイクやギターなどの楽器を接続しない(外部入力がない)ことから来ています。
難しそうに思われるかもしれませんが、小型のミキサー1台と数本のパッチケーブルがあればすぐに始めることができます!
No-Input Mixingの原理
「No-Input Mixing」では、本来接続してはいけない端子同士を接続して演奏をします(たとえばヘッドフォンアウトをライン入力に繋ぐなど)。
こうすることで、フィードバックという現象が発生し、何もない(微量のノイズ)ところから音が生まれるのです!
フィードバックとは
カラオケなどでマイクをスピーカーに近づけた際、キーンという耳障りな音が発生した経験はありませんか?
スピーカーから出た音をマイクが拾い、その音がまたスピーカーから出てマイクが拾う……。この現象は通常「ハウリング」と呼ばれますが、これもフィードバックの一種です。
No-Input Mixingで注意すべきこと
「No-Input Mixing」におけるミキサーの使い方は、メーカーが想定するものではありません。したがって、ミキサーのみならずスピーカーなど周辺機器の故障を招く可能性があります。リスクを理解したうえで自己責任で行ってください。
また、ほんの少しツマミを回しただけで瞬時に大音量が発生する場合があります。耳を保護するためにも音量は小さくしましょう。ヘッドフォンの使用は避けた方がよいでしょう。
No-Input Mixingの実践
さて、文章だけではわかりづらいと思うので、実際に音を出してみましょう!というわけで、手持ちの(20年近く使っている)YAMAHA製ミキサー「MG10/2」を使って実験したいと思います。
フィードバックが発生しさえすればどこをどう繋いでも構わないのですが、今回はさきほど例に出した「ヘッドフォンアウトをライン入力に繋ぐ」を試してみましょう。
まず、パッチケーブルで2つの端子を接続します。そして、意図しない音が発生するのを防ぐため、使用しないチャンネルの音量はすべて0にしておきます。
それではいざ演奏。入力1ch GAINを12時、入力1ch LEVELとC-R/PHONES LEVELを3時にとりあえず設定。
最後にST LEVEL(マスターボリューム)を、ほ ん の 少 し づ つ (重要!)上げていくと……
【 音 量 注 意 ! 】
3時くらいまでは無音でアレ?と思いましたが、4時付近で突如爆音アナログシンセのベースのような太い音が!!
No-Input Mixingに適したミキサー
「No-Input Mixing」では、フィードバックを発生(ノイズを増幅)させることができればよいので、基本的にはどんなミキサーを使ってもOKです。
現在ミキサーをお持ちであれば、新たに購入する必要はありません。
ただ、エフェクトが内臓されていたり、端子やツマミがたくさんあったりする製品の方がサウンドバリエーションは広がるでしょう。
通常ミキサーは低ノイズ(S/N比の良い)製品が好まれますが、「No-Input Mixing」ではノイズを元に音作りを行うため、あえてノイズの多いレトロなミキサーなどを選ぶのもアリかもしれません。
まとめ
今回は知る人ぞ知る「No-Input Mixing」についての解説記事でした。
実験音楽的な手法なので、一般的なポップス楽曲に活用するのはなかなか難しいと思いますが、ツマミを回して音を変化させるのはとても楽しいので、興味のある方はぜひお試しあれ。