前回の記事で、MIDIデータをオーディオ化する重要性について解説しました。
今回も引き続き、それに関連するパラデータの作成方法や注意点について書いていこうと思います。
予備知識
パラデータとは?
画像のように各楽器ごとに書き出された複数のWAVデータを総称して「パラデータ」と呼びます。前回解説したMIDIデータのオーディオ化とは、まさにこの「パラデータ」を作成することを意味します。
サンプリングレートとビットレート
「サンプリングレート」とは1秒間を何分割するかを表す値で、たとえば44.1kHzの場合は44,100個に分割して記録します。一方、「ビットレート」は音の大きさ(波形の高さ)を何分割するかを表す値で、たとえば16bitの場合は2の16乗に分割して記録します。
前者は横軸、後者は縦軸と考えてください。
それぞれの数値は、高ければ高いほど理論上は高音質となります。
しかし、その分データサイズは大きくなり、場合によっては1曲で数GB使用することもあり、ストレージを圧迫します。また、CPUやメモリへの負荷も変わってきますので、ご自身のパソコンのスペックとも相談してください。
推奨値は?
パラデータ作成時のサンプリングレートやビットレートは、CD規格(44.1kHz/16bit)以上の数値であれば、最低限はOKです。
ただし、ミックスでは各パートにEQやコンプなど多数のプラグインをインサートすることが一般的です。さらに、マスタリングではリミッターやマキシマイザーで音圧を稼ぐことになります。つまり、原音に対して大幅な処理を今後施していくことになるわけです。
そう考えると、パラデータのサンプリングレートやビットレートは高めに作っておくに越したことはないのです。
したがって、高精度なミックスやマスタリングを行いたい場合や、ハイレゾ配信(96kHz/24bit)などを予定している場合、このタイミングでアップサンプリングしておきましょう。
ちなみに、パラデータの業界標準値は48kHz/24bitのようです。この設定であれば、ミックスやマスタリングの処理にも十分耐えられますので、ぜひお試しください。
作成前の準備
新規保存
まず、パラデータ作成用にファイル名を変えて新規で別名保存します。
エフェクトは外す
例としてSampleTank3で解説します。赤枠内を見るとすべてのトラックにEQやコンプなど2~5個のエフェクトが適用されていることがわかります。
このように、多くのソフト音源はデフォルトで何らかのエフェクトがかかっています。エフェクト処理はミックスで行う領域ですので、これらはすべて外してから書き出すのが一般的です。
特にリバーブやディレイといった空間系エフェクトは、センドトラックでまとめて処理しないと統一感がなく不自然な仕上がりとなってしまいかねないため、必ず外すようにしてください。
パンポットはセンター
パン振りもミックスで行います。そのため、現在パンが振ってある場合はすべてセンターに戻しておきましょう。
最大音量は0dB以下
デジタル信号は0dBFSが最大値であり、それを超えるとクリッピングが発生します。したがって、パラデータ作成時のみならず、デジタル音楽データを扱う際は最大音量が0dB以内に収まるよう注意してください。
ひとまずエフェクトを外した状態で再生してみてください。マスタートラックのメーター(赤枠内)が、一曲を通して0dBを超えていなければOKです。
いざ作成!
前置きがかなり長くなってしまいました。ここからようやく作成に入ります。
とは言っても、ここまで来ればあとは1パートずつ順番に書き出していくだけです。WAV書き出しの方法はDAWにより千差万別なので、割愛します。
1小節目から最後の小節まで
パラデータは、すべてのファイルの尺(長さ)がそろっていなければなりません。イントロにしか使われていない楽器も、アウトロでしか鳴らないSEも、1小節目から最後の小節まで同じ長さで書き出していきます。
これが揃っていないと、DAWに取り込んだ際にタイミングがバラバラとなってしまい、曲を正しく再現できなくなってしまいます。
モノラル or ステレオ
モノラルで書き出せるパートは極力モノラルで出力しましょう。その方がしっかり定位感が出せるからです。
【モノラル推奨】キック・スネア・ハイハット・ベース・ボーカルなど
一方、左右に広がりのあるパートはステレオです。迷った場合は、ひとまずステレオで書き出して、必要に応じて後からモノラル化してもよいでしょう。
【ステレオ推奨】ピアノ・エレピ・ストリングス・シンセパッドなど
適切なファイル名をつける
パッと見で何のパートか分かるよう、各ファイルには適切な名前を付けて保存しましょう。特に、ミックスを別の方に依頼する場合は必須です。
ファイル名に使う文字は、文字化け防止のため半角英数のみが基本です。
まとめ
今回は、パラデータの作成方法や注意点についての解説記事でした!
慣れないうちは苦労するかもしれませんが、何回もやっていれば自然とできるようになっていきますし、長く音楽活動を続けていくのであれば絶対に役に立つ技術なので、ぜひ身につけてください!